ひがし歯科

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上顎洞挙上術における頬側-口蓋側間の距離の影響

上顎洞挙上術で大量に骨は作れるのか

上顎臼歯部へのインプラントの埋入は、残存骨が少なく、さらに骨密度が低いので難しい。歯の喪失と上顎洞の含気化が起こると、歯槽突起が自然吸収されるので、インプラント埋入のための骨が減る。歯槽骨の高径も低くなっているので、歯槽骨を増大させる必要がある。上顎の臼歯部は脆弱な骨質(D4)のため、インプラントが早期に喪失しやすい。同じように、骨移植を避けて短いインプラントを使用したばあい、臼歯部は強い咬合力を受けるので、力学的に破綻するか、インプラント周囲炎を起こし、長期の成績は良くない。GBR, オンレーブロック移植、仮骨延長術、リッジスプリット、リッジエクスパンジョン、上顎洞挙上術などのインプラント埋入予定部位の歯槽骨の高さと幅の改善方法が登場してきた。1980年代にBoyneとJamesが歯科での上顎洞挙上術の、耳鼻咽喉科外科由来のコンセプトを照会した。もともと上顎洞挙上術は、無歯顎のケースで、上顎臼歯部にインプラント埋入の骨を確保するためのものであった。その後、改良され、異なった材料が提案されて、高い予知性と最小の侵襲が追求されてきた。

研究者は上顎洞挙上術の結果を左右する因子を見分けようとしてきた。治療されていない全身疾患、喫煙、インプラントの表面性状、移植材の種類、外科手技などが因子である。解剖学的な条件の重要性を指摘するひともいる。Fennerらは、動物実験で、上顎臼歯部でのインプラントの安定とオッセオインテグレーションについて、残っている歯槽骨の高さの影響を調べた。抜歯3ヶ月後、上顎洞挙上と同時にインプラント埋入した。残存歯槽骨の高さを2mm, 4mm, 6mm, 8mmの4グループにわけた。望ましい歯槽骨の高さを外科的に作った。インプラント埋入時と6ヶ月後に高共振周波数分析で測定したインプラントの安定性は、残存歯槽骨の高さに影響を受けていた。高共振周波数分析値は残存歯槽骨の高さに関係があった。インプラントの残存には影響しなかった。よって、インプラントの安定には少なくとも5mmが必要であるという考えは難しい。著者はオッセオインテグレーションは残存歯槽骨の高さに影響されうることも観察している。2本のインプラントの失敗は高さが2mmのグループであった。

Riosらは、上顎洞挙上の後の、残存歯槽骨とインプラントの安定との相関を調べるためのヒトを含めたレビューを行った。それによると残存歯槽骨が多いほどインプラントは安定していた。

ヒト対象で、Artziらは2つの子となる移植材料の骨伝導能を調べた。12人の被験者で両側の上顎洞挙上術を行った。12ヶ月後、生検を行った。生きている骨の割合は、移植材料にかかわらず、表面から内面に行くに従って有意に増加していた。このことは骨壁の欠如は、生きている骨の形成を妨げることを示唆している。

骨移植の成功とは、新しい骨が負荷され、リモデリングが機能して、移植材料が骨に置換されることである。この過程は、安定した場の存在、適切な血管形成(血液供給)、骨形成原細胞の遊走が必要である。これらは上顎洞と側壁の侵襲量が大きいと阻害されうる。骨の成熟が遅れたり、十分に成熟しないことは、上顎洞挙上の量が大きいときや、歯の喪失の後での残量歯槽骨量が少ないときに起こる。

そこで、上顎洞の頬側壁から口蓋側壁までの距離が、上顎洞挙上術時の骨の成熟度に影響を与えるかどうかを調べた。
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21人の被験者。上顎洞挙上術の必要のある。歯槽堤から8mm,10mm,12mmの位置で、上顎洞の頬側から口蓋側までの距離を測定した。ラテラルウインドウテクニックで上顎洞挙上術を行った。6ヶ月後のインプラント埋入時に、同時に骨の生検を行った。バイタルボーンの割合は、上顎洞の頬側壁から口蓋側壁までの距離と有意に相関があった。
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上顎洞挙上術では、増やす部分が少ないほうが、新生骨になりやすい。

G.Avila, H.Wang, P.G-Moreno, C.e.Misch, R.A.Bagramian, I.Rudek, E.Benavides, I.Moreno-Riestra, T.Braun, R.Neiva, The influence of the bucco-palatal distance on sinus augmentation outcomes.
J Perio, 2010,81,1041-1050

2010-10-06 MTAとレジンの比較 ビスフォスフォネートと顎骨壊死
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