歯科医 東のウェブログ
11年間の沈黙
11年間の沈黙、16年間のデジタル。――SNSを捨て、データの海に潜っていた理由
「ホームページが更新されていない医院って、全然流行っていないのか、それとも流行りすぎていて更新の暇がないのか、どちらかですよね」
先日、受診に来た超優秀な後輩の女医が、治療チェアに座りながらさらりとそう言いました。「後者でよかった(笑)」と二人で笑い合いましたが、実はそれが、この11年間の当院のありのままの姿でした。
最後にこのブログを書いたのは11年前。世の中はSNS全盛期となりましたが、私はその間、流行に目もくれず、現場の技術研鑽に潜っていました。チェア3台、内装も11年前のまま。しかし、その「中身」は、どこよりも濃密にアップデートされ続けてきました。
「ないなら作る」――FM-7世代のDIY精神と28万人のデータ
私はFM-7からデジタルに触れてきた世代です。現場の効率を突き詰めると、既製品のソフトではどうしても満足できません。
「ないなら、自分で作ればいい」
それが私の空気感です。
開業以来、28万人分の検査データを独自のデータベースに収め、iPadで即時に解析・発行できるオリジナルプログラムを自前で組み上げました。大手メーカーが最近になって導入したPISA(歯周炎症表面積)などの概念も、当院では8年以上前から当然のように実装済みです。この効率化があるからこそ、5名の超優秀な歯科衛生士たちが、その専門能力を100%患者様のサポートに注ぎ込めるのです。
16年間磨き続けたデジタル技術と、「10年後の成績」を選ぶ時代
この11年の沈黙の間、患者様の意識は大きく変わりました。かつて主流だったブリッジ治療を希望される方は驚くほど少なくなり、代わってインプラント治療をご希望される方が非常に多くなりました。現在、インプラントの予約は2ヶ月先まで埋まっている状態です。
これは単なる流行ではなく、世の中が「10年後に成績のよい方法は何か」を冷静に選ぶ時代になったのだと感じています。その期待に応えるのが、私たちが16年前から一貫して磨き続けてきたデジタル技術です。
* マイクロスコープ: 10年以上前から全チェアに完備。保険診療でも「見えなければ始まらない」という信念で使い続けています。
* デジタル内製化の歴史: 16年前から口腔内スキャナーを使い、西日本1号機だった5軸ミリングマシン、試行錯誤を重ねた4台目の3Dプリンタ。
* ハイブリッドな技工: 光学スキャンと、伝統的なシリコン印象をデジタル上でマッチングさせる「いいとこ取り」の技術も、海外の専門学会で学び、自律的にセッティングを詰め切っています。
11年前にホームページの更新を止めていた間も、このデジタル技術の歩みだけは一秒も止まってはいませんでした。
大切な患者様を守るための、令和8年のルール
11年前と今で、ひとつだけ変えたことがあります。それは「予約」というお約束についての考え方です。
かつては100回キャンセルされた方にも、いつかお越しいただければと、常に枠をご用意していました。ですが、今は令和8年です。私たちの時間は、今、目の前で真剣に治療に向き合ってくださる患者様のために、何よりも優先して使いたいと考えています。
そのため、どうしてもルールを守ることが難しい状況の方には、大変心苦しいのですが、現在はご予約を承っておりません。その結果として、ネット上に厳しい言葉をいただくことも稀にありますが、それに対して反論したり、心を痛めたりすることはお休みすることにしました。私たちの使命は、画面の向こう側の言葉と向き合うことではなく、信頼して足を運んでくださる方々に、長い歳月をかけて準備した最高の医療を提供することだと思うからです。
再び、発信を始めます。
AIが日常に降り立ち、歯科のデジタル化が当たり前になった今。
「16年間、何を考え、何を煮詰めてきたのか」
このマニアックで、けれど誰よりも真摯な現場の記録を、これからは少しずつお届けしていこうと思います。
11年ぶりの再会ですが、私たちの「中身」は、あの頃よりもずっと鋭く、深く進化しています。